ログ:null

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僕は通信指令室に駆け込んで、最後のログ代わりに通信をオープンにした。 カミイイダさんも一緒に映る。 でも何故か通信先からの応答はない。 「僕はいつかイワシに殺される気がしてました」 「どうして?」 「観察する側は進化しない」 僕が言うと、カミイイダさんは弾けたように笑い出した。 戸棚がずりずりと動き始める。 急速に傾斜していた。 通信設備が壁に押されて、順に異常を知らせる赤いランプを点灯させる。 ふと海の香りがして顔を上げた。 そこに立っていたのはカミイイダさんだったが、決定的にさっきまでのカミイイダさんとは違っている。 カミイイダさんの顔は、てらてら光るイワシの顔だ。 「やあ、私たちの神様。私たちのお父さん」 ぐらっと視界が歪んだ。 僕は怪物を生んだのか。 知性体になってる。 「私は百番遺伝子の後継者。あなたの組んだ百番目の遺伝子こそ進化の鍵だった」 その時、通信が繋がって、ノイズだらけの画面に通信手の姿が映る。 「第二派遣隊基地、大丈夫ですか?」 「助けて――」 僕は呻いた。 通信手の顔もまたピンクのイワシだった。 僕の知っている人間の何人かはイワシだとでもいうのか? 「さあ、私たちは自由を得た。職業の自由もね。私は軍人、そして研究者。お父さん、研究を続けましょう。私、お父さんの研究がしたいな」 カミイイダさんがイワシなりに、うっとり笑う。 僕の足元にひびが入った。 「海の下でね」 (了)
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