寿命100年の子

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寿命100年の子

 どんよりと曇った空。今にも雨が降り出しそうな日にボクは生まれた。こんなに天気が悪いなんて、この子はきっとあまり長生きできないだろう――誰もがそう思っていた。  しかし、寿命判定機に表示された寿命は100年という長さ。なんと、ボクは100年も生きられるらしい。  そのことを母から聞かされたボクは、それはもう大いに喜んだ。はしゃぎすぎて窘められるぐらいだった。 「誠、お母さんの心臓は70年ちょうどなの。あなたは私より30年も長く生きられるのよ。羨ましいわぁ」  自分の寿命を告げられてから、母はボクの姿を見ては羨ましいと言うようになった。父も同様だ。それを疎ましいと思ったことはない。むしろ、もっと羨ましがれと思うようになった。 「まことくんは良いなぁ」 「誠、事故には気を付けるんだぞ」 「お前は一族の誇りだ」  友人や親戚もボクを褒める。100年という寿命はボクの自慢だった。寿命の話題になる度に胸を張って100年と言い、羨望の眼差しを一身に受けた。気分が良い。この寿命はボクだけのものなんだという優越感。  嫉妬、妬み、憧憬、恨み――20歳まで様々な感情をぶつけられたが、すべてがボクを褒め称える言葉だ。
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