私は私が大嫌い

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私は私が大嫌い

 私は、自分のことが大嫌いだ。  無駄に高い身長も気に食わないし、細くつり上がった目もコンプレックス。おまけに他の女の子に比べて声が低いせいで、初対面の人にはまず怖がられる。何もしてないのに。  大屋(おおや)(りん)という名前も嫌いだ。  苗字は「大家」とか「大矢」なんて書き間違えられることがしょっちゅうあるし、倫という漢字は口で説明しづらい。倫理の倫と言っても伝わらない時は、不倫の倫です、なんて自虐的な説明をしなければならないのも億劫だ。  でも、そんなことよりももっと嫌いなのは、私の性格だ。  ごくまれに「大屋さんって美人だね」なんて言ってくれる人がいても、お世辞としか思えない。私よりももっと美人な子は山ほどいるじゃないか、と思ってしまう卑屈なところがまず嫌いだ。  それから、あらゆることに対してマイナス思考、ネガティブなところも嫌いだ。  ちょっと忘れ物をしたりテストで失敗したりしただけで、これでもかというほど落ち込んでしまう。失敗をずるずると引きずってしまって、いつまで経っても先に進めない。  そして一番面倒なのは、こんな根暗な性格のくせに、意地っ張りで負けず嫌いなところだ。  いつだったか、なぜだか知らないうちに同じ学校の先輩に目を付けられて、すれ違いざまに暴言を吐かれたことがある。よく覚えていないが、確か「調子乗ってんじゃねぇよ」的なことだったと思う。  そんなものは聞こえなかったふりをしてスルーすればいいのに、私はつい相手を睨み付けながら「どこが?」と、持ち前のドスのきいた声で言い返してしまったのだ。私のどこに調子に乗れるような要素があるのか逆に教えてもらいたい、という意味も含んでいたのだが、そんなことが幼稚な相手に伝わるわけもなかった。しかし、それ以降妙なちょっかいを出してくることは無かったので、私は静かに勝ち誇っていた。唯一の親友に「あんた怖いよ」と言われたことだけはショックだったけれど。  でも、私だって昔からこんな性格だったわけじゃない。昔は身長だってクラスの中で真ん中ぐらいだったし、声だってもっと子どもらしくて高かった。成長する身体を憎んで、そして自分のことを嫌いになった理由ははっきりしている。  高校生になる直前の、ある春の日。あの日から、私は自分のことを愛せなくなってしまった。
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