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バレンタインにはクラスのほとんどの女子からチョコを貰って、ランドセルに入りきれないからチョコを食べながら帰ったと噂になり、クラスの男子からこうちゃんは一目置かれていた。あの日のことはわたしも覚えているし忘れられない。
わたしとこうちゃんは隣同士の席。
こうちゃんはわたしに背を向けて座り、渡すためだけに並ぶ女子から流れ作業のようにチョコレートを貰っていた。
わたしは机に顔を伏せてその光景を見つめる。周りに冷やかされてへらへらするこうちゃんの背中に嫌いだよと小さな声で呟いた。
あの日こうちゃんがわたしを助けてくれた公園。チョコが入った箱をブランコに座って開けた。
昨日お母さんに手伝ってもらって作った、ピンクのチョコペンで【だいすきだよこうちゃん】と書いた大きなハートのチョコ。自然と涙が出てきた。
こうちゃんは人気者だから女子はみんなこうちゃんのことが好き。
だからわたしだけのこうちゃんじゃないんだよね。と涙をごしごしと拭いてチョコを眺めた。
「美紅はお兄ちゃんにチョコくれないのかよ」
「こうちゃん……だってもういっぱい食べたでしょ?鼻血出すからあげない」
突然現れたこうちゃんにびっくりしつつ、ふいっと顔を背けた。こうちゃんがわたしの手から箱を取り上げて、じっとだいすきと書かれた文字を見つめると一口でチョコを頬張った。
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