Hotel Little Demon

12/12
前へ
/12ページ
次へ
 ドアを開けた瞬間、気配を感じた。  虫や動物ではない。もっと大きな何かが、闇の奥へと駆け込む気配。気のせいなどではない。  呆然と、玄関で立ちすくむ。  俺は住所を教えたりなどしていない。あいつがどうやって、ここにたどり着けるというのか。  その答えは、すぐわかった。  あまりの単純さに、思わず笑いだしてしまう。  宿帳。  支配人に全く悟られなかったあいつだ。宿帳を盗み見るくらい、わけなかっただろう。神通力に頼るまでもない。  俺が笑うと、同居人も笑った。  騒々しくなりそうだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加