ブラック部活だけど、青春したい！

個人練習とパート練習

全体基礎合奏が終わり、老師は「ふぉっふぉっふぉっ。」と帰っていった。滞在時間１５分、嵐のような人である。

それ以降は自由時間なので、約１時間後にあるパート練習まで個人練習をする。
…その前に、伊音はトランペットパートに与えられた棚を探り、何冊か教本を手に取った。
基礎練習を取り扱う教本から、アーバン金管教本まで種類は様々である。

実は伊音、基礎練習やエチュードが大好きなのである。学校にはあまり使われることのなかった教則本が大量に積み上がっているので、伊音は有効活用することにしたのだ。

屋外の適当な場所を見つけ、肺いっぱいに空気を取り込む。春の陽気から、爽やかな初夏に移り変わっているのがわかる。

まずは、力を抜いた伸びやかなロングトーン。晴れ晴れとした空に吸い込まれるように、上っていく音。

(…思ったよりも悪くないかもしれない。)

外での練習ということで、音響は全く期待していなかったが、駐輪場と校舎に挟まれたこの場所は案外いい音がする。

心地よい風に身を任せつつ、伊音は時間いっぱいまで個人練習を楽しんだ。