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練習with老師
パートが決まった翌日から早速、練習が始まった。
基本的には部活前のミーティングの後、ウォーミングアップ&音出し→全体基礎合奏→個人練習、またはパート練習→(ある時は)全体合奏、という流れのようだ。
部活全体としての活動は18:30までだが、その後は自主練(という名のサービス残業)があるらしい。
ミーティングを終え、「吹奏楽部十ヶ条」を叫び、ウォーミングアップに入る。
ウォーミングアップは、主にブレストレーニングなどで体を温める。
今日は初めてのブレス練習なので、先輩が後輩について指導しながらである。
「今日はあたしが未央ちゃん担当だよー!確認のためにお腹とか触るけど大丈夫ー?…大丈夫みたいだねー!」
「…実乃梨に何かされたらセクハラで訴えたらいいよ。…手伝うから。」
華が「ファイト」と未央に小さくガッツポーズで声援を送った。
…実乃梨が未央の担当ということは、自ずと伊音の担当も決まってくる。
「-伊音は俺が担当な。」
「諒先輩、よろしくお願いします。」
…華がまた何か言うのかと予想していたが、何も言われない。ただこちらをじっと見ていた。
「…華先輩?」
「…なんでもない、続けて。」
「?」
そうは言いつつも見つめてくる華の視線を伊音は不思議に思いながらもシャットアウトし、ブレストレーニングに集中した。
まずはテンポ60(1分間に四分音符が60のテンポ、秒針と同じ)で4拍、腹式呼吸法で息を吐く。
腹式呼吸で大事なのはまず「吐く」こと、そして「お腹を膨らませること」。「お腹を膨らませる」=「横隔膜を動かして、肺を広げること」と伊音は意識している。
先輩達も1年のお腹に手を当てて、お腹が動いているか、肩で息をしていないかを確認している。
さらに、演奏に生かすために息を吐く量は均一にする。お腹で息の量をコントロールするイメージだ、特にインナーマッスルが鍛えられる。
次は8拍、更に「冷たい息」という指定が入る。
実は温度指定も大切で、特に金管楽器奏者は息の温度とスピードのコントロールが大事になってくる。伊音は「冷たい息」=「熱々のおでんをふーふー冷ます息」とイメージしている。
8拍の次は12拍、と続けてブレストレーニングは終わった。諒からも、
「流石に上手いな。」
とお褒めの言葉をいただいた。
相変わらず華が無感情な瞳をこちらに向けていた。
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