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井上明日香先輩からの突然のメール
<洋ちゃんに会いたい!会えなくて苦しい。今度こそ返信して>
携帯に井上明日香先輩からのメール。
四月のカレンダーをチェック。
すぐ次のメール。
<早く来て!>
明日行こうって予定を立てた。
いままでメール来たって返信しなかった。
でもこんな切実なメール。知らん顔なんかできない。
そのとき、またメール!
<ごめんね。我慢できない!すぐ来て!黒笹駅着いたら連絡入れて!
それからね。
ふたりで撮った写真、少し持ってきて。
家に帰ればあるんだけど、生徒会長になって忙しく、週末もあんまり帰れなくなったから・・・>
先輩がってどんな人だかよく知ってる。平気でムチャなこと頼んだりしない。
すぐに行かなきゃ!時刻は午後七時。
あわてて身支度をする。携帯が着信知らせる。
表示を見る。
カーッと顔が真っ赤。
「洋介君!」
しばらくぶりの母の声。なにも答えなかった。言うことなんてない。
「東部高校の入学辞退のこと聞いた。それで・・・」
少し動揺・・・
「洋介君が東部高校に入学するってこと、お母さんだって知ってた。
洋介君のめざしてた日本英語学院って、付属の東部高校進学コースの生徒を優先的に入学させてるから・・・
おじいちゃんが洋介君を自分の後継者に・・・日本の英語教育の第一人者にしたいと考えていたことだってよく知ってる。
お父さんが亡くなって家を出て再婚したけど、
お母さん、
洋介君のこと、忘れてなんかいない」
だけどぼく・・・
「言い訳になるけど携帯が壊れて修理に出してて、ちょうどその時、夫の仕事で海外に行くことになったの。
すぐ帰るはずが、新しいビジネスの話があって延びてしまって・・・」
だから連絡とれなかった・・・
だけど・・・
「お母さんね。夫の母親や家政婦にも、家に電話が入ったらすぐ連絡してと伝えてあったのに、わざと教えなかったの」
母を怨む必要なくなった。
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