出会いは突然に・・・高城サキさん

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出会いは突然に・・・高城サキさん

 東京の有名な古書街で、急に呼び止められた。    警官がふたり。    「学校はどうした!」    怒鳴りつけられた。    あわてない。あわてない。    「ぼく、高校生じゃありません」  警官は不審そうにぼくのこと見る。    平日の昼間。    未成年の少年が街をブラブラしてるなんて、とんでもないって言いたいみたい。    「調べてくださればわかります」    ぼくのこと、ジロジロ見る。うすい笑い。    突然、呼び止めて怒鳴りつけ、謝りもせず立ち去る。    警官が何人もいる。イベントでもあるの?    一ケ月前。    不審者尋問されるなんて、思ってなかった。    日本英語学院大学付属校私立東部高校に入学してるはずだった。    いま、松山洋介(まつやまようすけ)って名前、この高校にない。    かわりに別の生徒が机に向かってる・・・    いまのぼくって高校浪人。無職。    そして「負けイヌ」。    なのに毎日、辞書専門の古本屋に来る。店の前で、ショーケースを見る。    ショーケースに五センチほどの厚さの『ペンシルベニア英和辞典』。日本で初めて刊行された英語の辞書。    ずっと古本屋に通ってる。値札見てためいき・・・    三十万円・・・    第一、買ってどうするの。もう必要ないんだもん。    分ってんのに・・・ こんなことしてるんだ。ぼくって・・・   何日も半月近くも・・・    変化があったのって四月下旬の今日。    金曜の午後。
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