眼鏡美人・進藤早智子さん

1/4
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ

眼鏡美人・進藤早智子さん

 スーパーの駐車場に駐車された宣伝カーのステージ。  『女子校パラダイス』のメンバー二十人の歌声が響く。  ミニスカートが風を受けて舞う。その度に流れる白い太腿の曲線。  黒のハイソックスが大きく左右に揺れる。   ステージの前には何百人の観衆。ひとりひとり、自分の好きなメンバーの名前を絶叫中。  ステージの縁にしがみついてる人までいる。  二十代半ばのビジネススーツの人が声枯らしてる。  「長谷川甚平です!リエちゃんの名前で百枚購入しました!」  ぼくの聞いた話・・・  百枚以上、CDやDVDを購入して、  「このCDは、特定のメンバーのために購入する」 って申告したら、購入者の氏名がそのメンバーに連絡され、メンバーには購入枚数分の印税が支給されるんだって・・・  メンバーだって、自分の名前でCDを購入してもらおうって必死。     「リエちゃん!こんなケチ、相手にすんな。  堀田春平。堀田春平だ!  リエちゃんの名前でCD五百枚買った。聞こえてる?五百枚!五百枚!」    さっき見かけた買い物袋を提げたスキンヘッドの人。  ステージに向かって、大声で叫んでる。  「原鶴司だ!この金、見てくれ!わしのズボン脱がしてくれ!  いくらなんじゃ」  いまにも死にそう。悲痛な叫び。紙袋の中の札束、ステージに見せつけてる。  街宣車のそばにいた眼鏡の女子があわてて近寄ってきた。  紺のブレザーの制服。髪は短めのボブ。青いレンズの眼鏡。眼鏡の奥には知的な目。  ミニスカートから白くて細い脚。足首には黒のクルーソックス。  さりげなく髪をかきわける。髪が眼鏡の縁をすべった。  身長は、一メートル六十センチくらい。ぼくと変わらない。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!