【1限目】『颯爽登場!我ら青春してるンジャー!』

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

【1限目】『颯爽登場!我ら青春してるンジャー!』

•••チッ•••チッ•••チッ••• ボーン ボーン ボーン ボーン 時刻は夜中の1時を回った。 学園の創立60周年記念に寄贈された大きな古時計。 正面玄関に置かれたそれが静かに歌う。 「はぁ、はぁ、はぁ•••」 職員室の一角から1人の人間の吐息、ボンヤリとした光、そしてカタカタとパソコンのキーボードを打つ音が漏れ出ていた。 ここは県立蒼晴"そうせい"学園高等学校。 生徒たちは文武両道に努め、学風もそんなに申し分ない、至って一般的などこにでもある公立高校だ。 校訓は『蒼き空と共に』 特に深い意味は存在しない。 夜中の学校に忍び込み、息を荒げてキーボードを打つこの男。 着ているパーカーのフードを深くかぶっているため、顔までは確認できない。 本来ならば通報も妥当な判断だ。 しかし、何を隠そうこの人物がこの物語の鍵を握っている。 なのでここで捕らえられると、後々の展開に支障をきたすため、通報は遠慮して頂きたい。 あ、この男が主人公というわけでは決してない。 「•••送信••と」 その瞬間。 ピカッ。パッ、パッ、パッ••••• ジリリリリリリリー!! 男が呟いたと同時に学園中の明かりが灯される。 そして鳴り響く警報音。 「•••警備システムか。仕方ない」 そう言うと、男はフッと走り出した。 フードの男は並ぶ机の間を縫い、電気スイッチを次々と押し、再び学園を暗闇に包んだ。 最後のスイッチを押すと賑やかな警報音は止まった。 「そろそろ時間か•••」 男が壁掛時計に目をやる。 素早くパソコンを片すと、男は職員室を出て、学園の外へと姿を消した。 今度は警備システムにかからずに。 濃蒼色の空には薄暗く紅い三日月が浮かんでいた。 まるでその男の今後を占うかのように。 男は薄暗い月を見上げた。 そして、 「あの子たちに幸あれー」 三日月は男に笑いかけた。 優しさの笑みか、それとも嘲笑なのか。 それは誰にも分からない。 時刻は午前1時15分。 スヤスヤと眠る、6人の蒼晴学園の生徒たち。 彼らの元に1通のメッセージが届き、 枕元の携帯電話がほんのりと光を放った。 『明日の放課後•••』
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!