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【1限目】『颯爽登場!我ら青春してるンジャー!』
•••チッ•••チッ•••チッ•••
ボーン ボーン ボーン ボーン
時刻は夜中の1時を回った。
学園の創立60周年記念に寄贈された大きな古時計。
正面玄関に置かれたそれが静かに歌う。
「はぁ、はぁ、はぁ•••」
職員室の一角から1人の人間の吐息、ボンヤリとした光、そしてカタカタとパソコンのキーボードを打つ音が漏れ出ていた。
ここは県立蒼晴"そうせい"学園高等学校。
生徒たちは文武両道に努め、学風もそんなに申し分ない、至って一般的などこにでもある公立高校だ。
校訓は『蒼き空と共に』
特に深い意味は存在しない。
夜中の学校に忍び込み、息を荒げてキーボードを打つこの男。
着ているパーカーのフードを深くかぶっているため、顔までは確認できない。
本来ならば通報も妥当な判断だ。
しかし、何を隠そうこの人物がこの物語の鍵を握っている。
なのでここで捕らえられると、後々の展開に支障をきたすため、通報は遠慮して頂きたい。
あ、この男が主人公というわけでは決してない。
「•••送信••と」
その瞬間。
ピカッ。パッ、パッ、パッ•••••
ジリリリリリリリー!!
男が呟いたと同時に学園中の明かりが灯される。
そして鳴り響く警報音。
「•••警備システムか。仕方ない」
そう言うと、男はフッと走り出した。
フードの男は並ぶ机の間を縫い、電気スイッチを次々と押し、再び学園を暗闇に包んだ。
最後のスイッチを押すと賑やかな警報音は止まった。
「そろそろ時間か•••」
男が壁掛時計に目をやる。
素早くパソコンを片すと、男は職員室を出て、学園の外へと姿を消した。
今度は警備システムにかからずに。
濃蒼色の空には薄暗く紅い三日月が浮かんでいた。
まるでその男の今後を占うかのように。
男は薄暗い月を見上げた。
そして、
「あの子たちに幸あれー」
三日月は男に笑いかけた。
優しさの笑みか、それとも嘲笑なのか。
それは誰にも分からない。
時刻は午前1時15分。
スヤスヤと眠る、6人の蒼晴学園の生徒たち。
彼らの元に1通のメッセージが届き、
枕元の携帯電話がほんのりと光を放った。
『明日の放課後•••』
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