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「なぁ、俺がいつ椿に魅力がないって言った?」
今日はいい日のはずだ。
椿が退院して家に帰ってきた。大きな手術と意識が戻らないという難渋を見事に乗り越えて、俺の家に帰ってきた。
祝うべき目出度い日に、なぜ二度も泣く必要がある?
付き添い続けた冬の間、少しのストレスも感じなかったわけではない。椿の回復だけを信じ、毎日、前向きに頑張れたわけではない。
それでも、いつかまた椿を抱きしめられることを願い、やってきたんだ。泣かせるために、頑張ってきたわけではない。
庸介は椿に覆い被さると組み伏せた。
「泣くな!」
庸介の怒鳴り声に、椿の肩がビクリと動き、濡れた瞳が大きく開いた。
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