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ずっと我慢をしていた。かれこれ半年だ、半年も我慢をしてきた。
抑えられるわけがないだろう。
思わず抱きしめる腕に力が入る。そのままキスをしようと顔を傾けて、椿が泣いていることに気が付いた。
「……どうしたの?」
椿は唇を噛みしめると首を横に振る。
「とりあえず、家に入ろうか」
泣いている理由は分かっている。
庸介は椿をソファに座らせると、隣に座り手を握った。
髪だ。短い髪を気に病んで泣いているのだ。
前回の手術のあと、祝賀パーティーで再会したときと同じくらいの長さだ。言葉には出せないが、子どもの猿のようで可愛いと庸介は思っていた。
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