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ドアを開けると、ソーセージの焼けた匂いとコーヒーの匂いが鼻をくすぐり空腹を刺激した。
「おはよう」
庸介の声に驚きピクリと肩を震わすと、椿は顔は上げずに慌ただしく二つのカップにコーヒーを注ぎ、テーブルの上に置いた。
「お、おはようございます」
朝食の用意されたテーブルに庸介が着くと、椿も向かいに座る。
「……あ、そうだった! 洗濯物を干してきます」
わざとらしく手を打ち早口でまくし立てると、大きな音を立てて椅子から立ち上がり、椿はリビングを出て行ってしまった。
カップからのぼる湯気をポカンと見つめる。何か自分は寝ている間に変なことをしてしまったのだろうか? 明らかに椿は庸介を避けていた。
あそこまであからさまに避けられる理由を考えてみても全く思い浮かばない。
温かいうちに一緒に食べた方が美味いに決まっている。
階段を上がる音が聞こえる。庸介も立ち上がると、音を立てないようにそれに続いた。
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