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え?
「ダメ?」
やはり頭が痛いのかもしれない。
「病院に行こう。その前に、電話しないと……」
「え? ……病院?」
赤い顔を椿は上げた。不思議そうに見つめている。
「ダメなんだろう? 頭が痛い? 大丈夫?」
慌てる庸介に、庸介の勘違いが分かった椿はふわっと笑った。遅い春の訪れのようなその笑顔に、庸介の胸は大きく打ちつけられた。
「頭は痛くないです。体調はとてもいいですよ」
「じゃあ、なにがダメなんだ?」
椿の表情がくるくる変わる。春のような笑顔は熱い夏の日差しを受けたようにまた赤くなり、唇を噛むと椿は胸におでこをつけた。
「……昨日のことです」
「昨日?」
体調は良いようだ。ホッと安心した様子で椿の髪を梳きながら、昨日の出来事を思い返した。ダメなところが何一つ思い浮かばない。
「汚いですから……」
汚い?
全く意味の分からない庸介は、次の言葉を待った。
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