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「経験があるのは当たり前ですし、だから、当然他の人のことも私と同じように触れたり……舐めたりしたのだろうと、過去のことをとやかく言っても仕方ないと理解しているのに……」
鼻をすすりながら、あふれる涙を拭うこともなく肩を震わせている。悲しませているのは自分に違いないのに、なぜだろうか、愛おしい気持ちが心の奥から込み上げてきた。
「過去の女性関係に嫉妬する私は、重くて女々しい女だと分かっているのに」
推測だ。
たぶん、我慢しきれずにしてしまった普段より少しサディスティックな言葉や愛撫と、初めての経験であろう舌での刺激に椿はすっかり翻弄されたのであろう。
自分の理解を超えたセックスに翻弄され、ふと冷静になり、俺の過去を考えてしまったのだろう。
過去にまで嫉妬されるほどに愛されている事実に、自然と頬が緩む。こんな顔を見られたら、なんで笑うのですか! と逆鱗に触れてしまいそうだ。
庸介は顔を崩さないように努めながら、なんと言って慰めたものかと頭を悩ませた。
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