涙の雫を笑顔に変えよう

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 意識が回復してしばらくは、体力も落ちていたし自分の外見に気を配る余裕はなかった椿も、一か月が過ぎたころから髪の長さをしきりに気にするようになった。  痩せ細った腕やふくらはぎの皮がカサカサにシワシワになっているのも、言葉にこそしないものの気にしていることが分かった。  庸介としては、椿の胸がどうなっているのか気になるところであった。入院中は身体を拭くのは看護師か母が行っていて、庸介がやることはなかった。当然と言えば当然だ。  食事を普通にとれるようになるにつれ、頬の艶やふくらみもだいぶ戻った。リハビリのおかげで腕や足にも少しずつ筋肉が戻った。  でも、髪の長さだけはどうしようもない。 「ねぇ、椿。何度も言うけれど、短い髪もよく似合うし可愛いよ」  止まらない涙を隠すように両手で顔を覆うと、椿は首を横に振る。
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