涙の雫を笑顔に変えよう

31/38

3129人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
「いや、まぁ……一般的にはウジウジ言われることは嫌だと感じる男が多いと思うけど……」  眉根を寄せた椿が目を伏せた。庸介は意識を回復したあの日から比べるとだいぶふっくらした椿の頬を手で挟むと顔を上へ向けた。 「そうだな……俺も本来はその一般的概念に当てはまる。ただ、あくまで本来は、だ。そりゃ毎日毎日過去の女のことを突かれ泣かれ続けたら嫌になるかもしれない。でも、いいかい? 椿が気になるなら気になると正直に話してくれてほうが俺はいい。無理して笑う椿を見るよりも、憂いを解消して楽しそうに笑う椿を見ているほうがいいんだ」  椿の頭の中に斉木の言葉が蘇った。 「それに椿はネットに振り回されるところがある。だから、たとえそれが少し恥ずかしいことでも、まずは俺に聞くこと。いいね?」  椿は庸介の腰に手を回すと胸に顔を埋めた。 「……いろいろと大切なことを忘れかけていました」  椿の声の柔らかさに、何か小さなとげのようなそんなものが取れたのだと庸介は感じた。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3129人が本棚に入れています
本棚に追加