涙の雫を笑顔に変えよう

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「庸介さんの直木賞の祝賀パーティーの際は笹川さんのワンピースをお借りしたのです。あの時は美容室にも連れて行っていただきました。絶対にステキなものを選んでくれます。庸介さんは楽しみにしていてください」  本当は一緒に選びたいのだけれど、あまりベタベタとしつこくしても嫌われてしまうかもしれない。庸介が渋々承諾すると椿は優しく微笑んだ。 「さあ、干すの手伝ってください。私もおなかペコペコです」 「そうだね。腹が減ってたの思い出したらもっと減ってきた。早くしよう」  干しながら、今日はどうしようかとそんな会話を交わす。本を読みたいと言う椿に合わせて、庸介は少し仕事をすることにした。  穏やかな風が二人を包む。小鳥のさえずりがまるで二人の生活の始まりを祝福しているように感じて、庸介は幸せな気持ちになった。  
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