愛しい君へ、愛しいあなたへ

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 椿は首を傾げるとその先の言葉を待った。 「まるで……桜の妖精みたいだ」  真顔でそう言う庸介に髪を弄びながら椿は吹き出した。 「桜の妖精って……庸介さん、あんなにシビアなお話を書かれているのにずいぶんとファンタジーですね」  そう言いながらやはり髪を触る。 「本当だよ。こんなに椿に似合うワンピースを選んだ笹川さんに完敗だ」  洗いっぱなしの髪に触れながら、素肌の椿は顔をくしゃくしゃにして笑った。 「これは、自分で選びました」  自分の中にはなかったその答えに、庸介は心の底から驚いた。
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