愛しい君へ、愛しいあなたへ

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 はにかみながらスカート部分のサテン生地を撫でた。 「笹川さんが選んでくださったのは少し大人びていて……。迷ったのですが、一目惚れしたこちらにしました。庸介さんに褒めてもらえて嬉しいです」   誇らしげに嬉しそうに微笑む椿を見ながら、庸介は自分の言動を悔いた。  俺が選ぶなどという傲慢な考えを恥ずかしく思い、笹川が選んだと決めつけた自分をなんて短絡的で配慮に欠けた人間だと責めた。 「どうしましたか? やっぱりおかしいですか?」 「いや、違う。なんてダメなやつだと自分のことを思っていた」 「庸介さんがですか? ダメ? なぜですか?」  静かに首を横に振ると椿を抱きしめた。 「メイクしようか? あと髪も少し整えよう。このままでも十分可愛いけど、もっと可愛くするよ」 「はい! よろしくお願いします。この間、庸介さんがアイライン入れてくれたじゃないですか。また入れてください」 「気に入った?」 「はい! 練習したのですが自分では上手くいかなくて」  椿は短い髪を掴むようにして弄んだ。
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