愛しい君へ、愛しいあなたへ

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 椿の指がまた髪に触れる。  ほんの僅かに庸介が眉をひそめたが、椿は気が付かなかった。 「庸介さん、とてもステキです」 「ありがとう。椿も可愛いよ」  椿は照れたように笑うと、また髪に触れた。 「先に庸介さんに用意してもらえば良かったです」 「なぜ?」 「お化粧してしまってはギュッと抱きつくことも出来ないですし、キスも出来ません」  残念そうに顔をしかめる椿を庸介はお構いなしに抱きしめた。 「ダメですよ、ファンデーションが付いたらなかなか落ちないと思います」 「そうか……」  庸介は腕を緩めると椿の頬を指で撫でた。 「でもキスは大丈夫だ」 「庸介さんに付いてしまいます」 「今椿の唇を彩るのは俺がプレゼントしたグロスだよな?」 「はい」  庸介は頬を撫でる指を滑らせて、椿の顎を上げた。
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