愛しい君へ、愛しいあなたへ

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「ごめん……女性に対して配慮に欠ける行為だったよ。本当に悪かった」  椿は頷くと、桃色に染まる頬を綻ばせた。 「今日は、スピーチとかお付き合いしっかりこなしてくださいね」 「ああ」 「私、今夜はたくさん労いますから」  小声で囁くと、はにかみ目を伏せた。 「つ……!」  庸介が何かを言いかけたところで、リムジンは車止めへと進入した。  危なかった。もうすぐで言いそうになってしまった。愛する椿への気持ちを伝える術をネタバレするところだった。  運転手さんがドアを開け、先に庸介が車を降りた。そっと手を差し伸べて椿をエスコートする。  直木賞の祝賀パーティーと同じ一流ホテルのエントランスだ。  中から鈴木が小走りに向かってくるのが椿に見えた。その手前のガラスに映る自分の姿に視線を移す。  椿はまた髪に触れ引っ張った。  苦しそうに目を伏せた庸介が次に瞳を上げたとき、そこには決意の光が差していた。
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