愛しい君へ、愛しいあなたへ

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 駆けてきた鈴木は目を潤ませて椿に退院祝いを告げた。そんな、感動の再会は束の間で、庸介の腕を取ると監督がいらっしゃっていると、急いだ様子で早口に話した。 「椿さん、中島が今来ますから中でお待ちください」  申し訳なさそうに頭を下げると、庸介の腕を引っ張り自動ドアをくぐっていく。 「あ、椿! 笹川さんと澤山くん、招待しているんだ。もうすぐ着くと思うから、連絡してみて!」  笹川と澤山の名前に驚き目を見開くと、椿はまた髪に触れた。 「はい! 庸介さん、頑張ってくださいね」  左の指先で髪に触れながら右手を振る、屈託のない椿の笑顔に庸介は目を細めた。  ーー今日でそれも終わりにしてやる。  密かな決意を胸に秘め、庸介は笑顔で手を振るとエレベーターの方へと消えていった。  
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