涙の雫を笑顔に変えよう

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 椿は起き上がると、庸介の腕の中に入ろうと狭いスペースに身体を押し込み始めた。  こんなことをされて、起きないわけがない。庸介は唸り声を上げると、眠そうに薄目を開けた。 「……どうした?」  庸介は身体をよけて腕を伸ばすと、椿をその中へと誘引し抱きしめた。 「目が覚めた?」  椿は庸介の鎖骨の辺りに顔をこすりつけている。 「また庸介さんの隣で眠れて、夢のようです」  椿が顔を上げた。 「キスを……してもいいですか?」  眠気の奥で庸介は躊躇った。寝起きの頭で、その上夜中で、誘うように身体を寄せられてキスなんてしたら、欲望を抑える自信なんて簡単に崩れると分かっていたからだ。 「ダメですか?」  ダメなわけがない。暗い闇の中でも椿の瞳が悲しげに揺れるのが伝わる。 「……たぶん、今の俺はキスしたら抑えられない。それ以上を椿に求めてしまう。それでもいい?」  それでもいい? なんてズルい聞き方だと自分でも思った。でも、抑えられないのは事実なのだ。椿が少しでも躊躇したら、軽くキスだけしてなにもしないように頑張ろうと心の中で思っていた。
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