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料理の乗った皿を手に、椿と津田は空いている椅子に掛けた。
「君はあまりパーティー慣れしていないんだね」
「え?」
「それは盛り過ぎじゃないかな?」
津田の皿を見ると、アンティパストが少しとローストビーフが数切れ、少しの野菜が乗っていた。
自分のさらに目を移す。ホカホカして美味しそうなのに誰も手を付けていなかったラザニアと山盛りのポテトサラダ、新鮮そうな鯛のカルパッチョ、端にフルーツを無理矢理に乗せてある。
「いいかい、こういうパーティーの場合、お腹いっぱいになるまで食べるものではないんだ。ましてや君は、今俺と一緒にいる。さっきまでは井桁簾楊もいた。いくらかの人から注目を集めているんだ。そんなにはしたなく盛ってはみっともないよ?」
津田に窘められ、椿は恥ずかしい気持ちいっぱいになった。言われてみれば、さっきから周りの人、特に女性からの刺さるような視線をひどく感じている。
シュンと肩を落とし下を俯く椿の様子に、津田が声を上げて笑い出した。
「まぁ、今のは一般常識だ。よそってしまったものは仕方ない。残すことが一番のマナー違反だからね、美味しくいただこう」
項垂れながらラザニアをスプーンですくうと口に入れた。程よい厚みのパスタとミートソースがなとんも言えない塩梅で絡みとても美味しい。
次々に口に運ぶ椿を見つめていた津田はフッと笑うとワインを口に含んだ。
「庸介が椿ちゃんに夢中になる気持ちが分かる気がするよ」
椿は食べる手を止めると、津田を見上げた。
「あの……」
「なに?」
「庸介さんは、どんな大学生でしたか?」
「うーん、そうだねぇ。……庸介は優しい?」
「はい」
津田は微笑むと、もう一口ワインを飲んだ。
「変わってないよ。あいつは昔から優しかった」
知り合う前から優しいのは知っている。ジョージもそう言っていた。
「……モテましたか?」
椿は探るような瞳で津田を見つめた。
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