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涙の雫を笑顔に変えよう
庸介の家の前に立つと、椿は白い壁を見上げた。
車庫に車を入れる庸介の真剣な表情を見ながら、幸せな気持ちが込み上げてくる。
すっかりと暖かくなった。
庭のライラックが薄紫色の小さな花を咲かせ、その香りが鼻をくすぐった。よく見ると紫陽花の木も花芽がついている。
「椿? どうした? 車に乗ってる時間長かったから疲れた?」
車を降りて庸介が横に来た。すっかりパーマがとれた真っ直ぐな黒髪は、サイドは耳が隠れるほどに伸びている。
椿は指を伸ばしその毛先に触れると、自分の髪に触れた。
「……庸介さん、伸びましたね」
「ああ、伸ばしてるんだ」
庸介は椿の頭を撫でると鍵を開けた。玄関を開けて椿の荷物を家に入れると鍵を閉めた。
「ただいまっと……久しぶりの家だな」
同意を求めるように振り返ると、ドアの前で椿は立ち尽くしていた。
「どうしたの?」
もう家の中だ。人目なんて気にしなくていい。庸介は椿を抱き寄せると髪にキスをした。
痩せたけれど、それでも椿の身体は柔らかい。
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