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双子のメアとミオは仲良しだった。いつも一緒にいて、なんでも半分こ。二人で一人。だから、妹のミオが不治の病になったとき、メアはなぜ自分が健康なのか疑問を抱いた。
「私たちはいつも一緒よ。なのに、どうして私は病気じゃないの?」
病院へ入院することになったミオとメアは一緒にいようとした。でも、それは叶わない。両親はメアを病院から連れて帰った。ミオとメアは初めて離ればなれになってしまったのだ。
「どうして一緒にいてはいけないの?ミオと私は二人で一人なのに。」
メアは悲しんだ。一晩中泣いて、気がつけば朝になっていた。病院へは昼間の少しの間しか連れていってもらえない。ミオは少しずつ痩せていった。病気でないメアも元気がなくなり、あまり話をしなくなってしまう。二人の様子を見た両親は心を痛めた。ミオがいなくなれば、メアは今よりも話さなくなるだろう。もしかすれば、自ら命を絶つかもしれない。せめて、メアだけでも助からないかと両親は精神科医に相談した。
「妹の代わりとなる物を見つけてあげてみてはどうでしょう?」
両親は必死になって、ミオの代わりとなる物を探した。可愛い人形、ぬいぐるみ、植物、甘いお菓子。しかし、どれもメアは興味を示さなかった。
「ミオの代わりなんているはずないわ。どんなにミオに似ていても、それはミオじゃないんだもの。そんなの、ただのにせものよ!」
次第にメアは両親へ不信感を募らせ始める。そして両親に黙って、ミオの病室へ遊びに行くようになった。面会時間が終わっても、こっそり隠れて、ミオの隣で一緒に寝た。
「私、ミオとずっと一緒にいるわ。他のだれより、ミオがいいの。」
「ありがとうメア。私もメアと一緒が一番よ。」
その夜、二人は同じ夢を見た。空いっぱいに輝く星の間から、黒い大きな獣が現れたのだ。獣は双子の片割れへ腕を伸ばしてくる。必死に止めようとするが、その腕は悲しいほど短く、届かない。行かないで、一人になるのは嫌だ。叫び声は濃紺の空に飲み込まれる。目が覚めると、二人はお互いに抱き締めあった。片割れがいることに心の底から安堵する。昼になると、両親がメアを迎えにきた。メアは帰りたくないとねだったが聞いてはもらえない。二人はまた離ればなれになった。神様はなんて残酷なんだろう。メアはお祈りをした。
(またミオと一緒にいられますように。二度と離ればなれにならないように。)
満月の夜、ミオの魂は星々の元へ昇っていった。その悲しみはあまりに深くメアは魂を抜かれたように、何もできなくなった。両親は見るに耐えかね、部屋の中へメアを閉じ込めてしまった。
「・・・ミオ、私も一緒に連れていって。」
窓から見えた空に、メアは一人で手を伸ばす。その手が掴まれる日は来るだろうか。
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