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東雲舞子さんは可憐である。
黒く綺麗な髪を緩く後ろで編み込み、色素の薄い茶色の瞳で世界を映す。
パステルカラーが好きなのか、よく淡い色の洋服を着ている。中でも多いのは水色だ。
うむ。彼女の清廉なイメージに実によく似合う。
とかなんとか、一体お前何様だと言われそうなことを一人考える。
ちなみにそう聞かれた時の答えは既に用意してある。『東雲さんのファン』。これ一択だ。
「中原くん。」
「っうはい!」
ぼけーっと彼女を観察していたら、唐突に呼ばれた自身の名前に思わず変な返事をしてしまった。
ああ。どうしよう。彼女の清い耳に俺の奇妙な声を入れてしまった。
心底後悔しようとも、過ぎてしまったものは仕方ない。たとえ彼女が少々引いたような素振りを見せていたとしても、もうどうしようもない。
人生は時に、どうしようもないこともある。
うん。きっとそうだ。
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