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最強の1勝馬
最強の1勝馬……マダカネキンメダルは競馬ファンの間でそう呼ばれている。中央競馬の競走馬は一般的に、新馬戦や未勝利戦、獲得賞金別にクラス分けされた条件戦で地道に勝ち星を3つ4つと重ね、ようやくテレビで中継されるような大きなレースに出られるようになる。しかし、ごくまれにいるのだ。最初の未勝利戦を勝利した後いきなり大レースで2着をもぎとって賞金を重ね、その後全く勝ち星を得ないままメインレースの常連となる馬が。マダカネキンメダルはまさにこのパターン。昨日まで25戦してたった1勝。しかし2着の回数は14回に上り、そのうち6回はダービーや菊花賞、有馬記念などといったG1レースだ。そして今日、マチカネキンメダルは25個目の黒星と15回目の2着を重ねたのである。
レースを終えて寮に戻り、僕はパソコンの電源をつける。
「また2着かよ」
「さすが最強の1勝馬だな」
「マダカネキンメダル、馬名変えたらいいんじゃない?マタモヤギンメダルとかにさ」
「武内勝之は今日も負之だったな」
「ま、ワイドや馬連の軸としては信頼できるけどな」
競馬関連の掲示板にはこのような揶揄が飛び交っていた。僕はインターネットのページをそっと閉じると、ベッドに倒れこんだ。
マダカネキンメダルは今、6歳。一般的にサラブレッドが競走馬としてピークを迎えるのは4歳から5歳と言われている。残されたチャンスは、少ない。
「マダカネキンメダルはやっぱりもう勝てないんじゃないか」
「僕がG1レースに勝てることはもう無いんじゃないか」
夜が更けていく中、僕は枕に顔をうずめながらそんなことを悶々と考えていた。
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