決戦の日

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決戦の日

 順調にマダカネキンメダルの調整を終えた安田記念当日の朝。僕は第1レースの騎乗馬・キナコモチに跨る。前走は勝ち馬と0.3秒差の5着だった馬だ。  ゲートが開き、僕は中団の外めにつける。そして第4コーナーから徐々にペースを上げていく。キナコモチは外目のコースをとり、そのまま加速度を増してゴール板へと向かっていく。そして最後はしっかりと先頭の馬を差し切り見事に勝利をつかんだ。  しかし、次に乗った第4レース。僕は1番人気の馬・ミルクタップリに乗りながら7着に敗れてしまう。コーナーの最も内側を通ってコースロスなく逃げたのだが、最後は完全に馬群に飲まれてしまった。  続いての騎乗機会は第7レース。僕は3番人気の馬・インフィニットグロウとコンビを組んだ。最後方からの競馬で、最後の直線は大外にコースをとった。猛然と追い込む僕たち。勝ったと思った。しかし、比較的内側のコースを進んでいた14番人気の馬・トラップに押し切られ、2着に敗れてしまった。上位に来た僕以外の馬は全て馬場の外目を回った馬だったのに、トラップだけは内側をスイスイと駆け抜けて行った形だ。 「これは、もしかして……」  僕は検量室のテレビに映っている第7レースの映像を見つめながら思わずそう漏らした。そして1時間後の第9レース。僕は4番人気のイエローバタフライに跨り直線半ばで突き抜け、後続に2馬身半差をつけて圧勝する。 「思った通りだ……」  僕はゴール板を駆け抜けた後そうつぶやいた。そして先生が今日、僕に4頭の馬を任せてくれた意味も漠然と分かり始めていた。  一筋の光が見えた。少なくとも僕にはそんな気がした。
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