The mirror captures you

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「ふう……ご馳走さまでした」  シャワーを浴びた後、彼女は出社までの時間を有効に使った。  例えば、今や汚部屋と化していた自分の生活スペースをある程度掃除して、準ゴミ屋敷レベルから一人暮らしの大学生レベルにまでは戻した。  例えば、普段使わない置物のテレビを付け、朝のニュースを見たりして、世間ではいわゆるゴールデンウイークに突入していることを知った。  例えば、いつもは電車や会社のデスクなどの通勤時間に取っていた朝食という名の栄養ドリンクを、近くのコンビニで買った弁当に変えて食べていた。  だが、有意義な時間というのはあっという間に過ぎ去るもので、既に出勤しなければならない時間帯になってしまっていた。あともう少しゆっくりとしていたかったが、そうもいってられないのが現状だ。  新しいシャツと下着に着替え、替えのスーツを着る。あとは髪を整えるのと少しばかりのメイクをするだけだ。 「そういえばさっき掃除したときに⋯⋯お、あったあった」  多くの郵便物が積もっている場所へ手を突っ込み、何かを引っ張り出す。  それは手鏡だった。手のひらサイズぐらいの丁度良い大きさで、特に装飾などは何もない。至ってシンプルな鏡だった。 「前使ってたのは割れちゃってさ~~、欲しかったんだよね―!でも何であるんだろう?郵便物と一緒に紛れていたから多分ポストに入っていたんだろうけど⋯⋯」  もしかしたらこれが誰かの鏡で、後に警察沙汰になる未来がよぎったが、私の郵便ポストに入ってたから私の物にしていいでしょ、と楽観視し、支度を済ませ、新しく手荷物として中に入れた。 「よし、それじゃあ⋯⋯いってきます―」  いつぶりかも分からない挨拶を言い、玄関を出ていく。  彼女は社会人となってから、久し振りのすがすがしい朝を迎えたのだった。  
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