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第一章 赤い流星 二 戦場の英雄
第一章 赤い流星 二 戦場の英雄
二 戦場の英雄
歓楽街の外れに、朽ち果てた廃屋があった。元は宿屋として使われていたその建物は二階部分が大きな爪で削がれたように崩れ落ち、どうにか原型をとどめている一階部分も傾いてしまって、いまにも倒壊しそうに見える。
剥き出しになった廊下には崩れ落ちた廃材が折り重なり、陥没した床板からは行く手を阻むように雑草が生い茂っている。薄暗い廊下の奥には頑丈そうな扉があり、扉の隙間から淡い明かりが漏れていた。
その扉の内側から、微かに女の嗚咽が聞こえてくる。
「お願いです、お屋敷に返してください・・・」
娘が震える声で言った。
手首を後ろ手に縛られ、身体は椅子の背もたれに括りつけられている。
十八歳くらいだろうか、まだあどけなさの残る清楚な顔立ちの娘だった。艶やかなブルーのパーティードレスに身を包み、胸元には赤いルビーの首飾り、耳たぶにも赤いルビーのイヤリングが揺れていた。
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