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円卓を挟んだ向いの寝台には、屈強な男が腰を下ろしていた。
肩まで伸びた黒髪は乱れて、顎には無精髭を生やし、剥き出しになった右肩の筋肉が異常に盛り上がっていた。
男の脇には鞘に入った両手持ちの大剣が立てかけてあり、鞘には精密な龍神の装飾が施されている。柄に刻まれたメシュール国の象徴である月の輪の国章は、男がただのならず者ではなく、元メシュール国軍の兵士であることを示していた。
「街中に捜査の手が回っている、いまはここを動きたくても動けない。今夜一晩は我慢してもらうしかないな」
男の声はいたって穏やかだった。その眼差しは諭すように娘を見つめている。
「どうして私がこんな目に合わなきゃならないの。どうして・・・う、ううっ」
娘が再び啜り泣き始めた。
「行きがかりじょう仕方がなかった。許せ・・・」
男は気まずそうに眉をしかめて、手にした杯に口をつけた。
「晩餐会の人混みに紛れて財宝をいただくつもりでいたが、予測以上に警戒が厳重だった。敷地の警護には治安維持部隊から警備隊が派遣されていたようだし、屋敷の中に特別攻撃隊まで待機していたところを見ると、計画が事前に漏れていたのだろう。誰がたれ込んだのかも見当はついている」
男は苛立つように酒を煽ると、大きく息をついた。
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