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いつの間にか、娘の嗚咽がやんでいた。眉をしかめ、落ち着かない様子で、もじもじと腰のあたりを揺すっている。
「お手洗いにいかせて・・・」
娘が囁くように言った。男は素知らぬ顔で、酒を飲み続けている。
「お願い、お手洗いにいかせて」
娘が語気を強めた。
「またそうやって、俺をあざむくつもりだろう」
男は探るような眼差しで、娘を見つめた。
「違うわ、本当よ」
「どうだかな・・・」
おとなしくしているという約束で一度は縄を解いてやったが、娘は隙を見て逃走を図った。
ドアに駆け寄って助けを呼ぶ娘を引き戻し、男は再び手首を縛ったうえに身体を椅子に括りつけたのだった。そして、泣きわめく娘を諭すようにして、ドアには鍵がかかっていること、周辺に人が出入りする建物はなく、助けを求めても無駄であることを言い聞かせた。
娘はようやく観念したが、再び縄を解いてやる気にはなれなかった。
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