第一章 赤い流星  一 赤い腕章の一団

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 第一章 赤い流星  一 赤い腕章の一団

 第一章 赤い流星  一 赤い腕章の一団      一 赤い腕章の一団  薄暗い路地の奥から煌びやかな歓楽街の表通りに出ると、男たちは思わず足を止めて路地の陰に身を隠した。ひとりは大柄の男で、左耳から口元にかけて刃物傷があり、腰には古びた長剣を下げている。もうひとりは細身で貧相な顔立ちの男だったが、目つきだけは鋭かった。 「どういうことだ、今夜はやけに治安維持部隊の姿が目につくじゃねえか」  大柄の男が通りを覗いながら、訝しげな表情を浮べた。歓楽街の入り口には警察隊による臨時の検問所がもうけられ、通りを巡回している治安部隊が人波に目を光らせていた。それにくわえて、普段は要人の護衛や主要施設の警護に当たっている警備隊の一団が、通りに立ち並んだ建物をしらみつぶしに捜索しているのだった。 「この様子だと、通りを横切ることさえできそうにないな」  細身の男が手にした革の鞄を抱え込んだ。鞄の中には大量の麻薬が入っている。取引場所の賭博場は目の前にあったが、通りに漂う緊迫感に気圧されて近づくことができなかった。 「おい、どうする。約束の時刻はとうに過ぎてるぜ」 「とりあえず、様子を見るしかない。俺は、裏通りの公衆電話でボスと連絡を取ってくる。あんたはここで、賭博場を見張っていてくれ」  細身の男はそう言って、路地の奥へと引き返していった。大柄の男は腰の長剣に手をかけて、近づいてくる警備隊の動きを警戒する。  青地の制服に身を包んだ警備隊の一団が、通りを挟んだ向かいにある賭博場に入っていった。それを目にすると、男は安堵したように大きなため息をついた。 「間一髪だ、あぶねえところだったぜ」  本当ならば、いまごろ賭博場の隠し部屋で組織の連中と麻薬の取引をしているはずだったが、途中で車両が故障してしまい約束の時刻に遅れたことが幸いしたのだった。
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