第一章 赤い流星  一 赤い腕章の一団

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「若僧が、いきがりやがって」  男が呟いて舌打ちした。 「貴様、いまなんと言った」  黒縁眼鏡が警棒で男の右肩を打ち据えた。男は腕で払いのけながら、掴みかかろうとする。 「貴様、抵抗する気か!」  二人の隊員は剣の柄に手をかけて威嚇してみせるが、傭兵として数々の戦場を渡り歩いてきた男にはなんの効果もない。 「ほう。上等だ、斬ってみろ」 「なにぃ!」 「どうした、剣を抜けよ。いいから斬ってみろ。言っておくが、こっちも無抵抗で斬られるつもりはねえからな。公衆の面前で丸腰の男に素手でぶちのめされたと知れたら、恥をかくのはお前らの方だぜ」  若僧相手に剣など必要なかった。男は拳を握り締めて詰め寄っていく。 「ついでに、そのたいそうな長剣も頂いていこうか。国章の入った長剣を奪われたとなれば、お前らの首が跳ぶだけではすまないだろうな」  予想外の男の挑発に、隊員たちは腰が引けている。
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