第一章 赤い流星  一 赤い腕章の一団

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「お前ら、ひとを斬ったことがあるのか。一度でも真剣で命のやり取りをしたことがあるのか。どうなんだ!」 「き、貴様ぁ!」 「公務執行妨害で逮捕されたいのか!」  その時、人混みの中で怒鳴り声が上がった。  振り向くと、治安部隊に取り囲まれた男が路上に押し倒されて、警棒で滅多打ちにされていた。辺りは騒然となり、悲鳴と怒号が入り乱れ、それを合図のようにして通りのいたるところで小競り合いが始まった。 「運の良い奴だ。今日のところは見逃してやる」  隊員たちは虚勢の言葉を残すと、逃げるようにしてその場を離れた。 「けっ、ぼんくらどもが」  男は路地に投げ捨てられた自分の剣を拾い上げると、油に塗れた刃をコートの袖で拭いながら、長く重いため息をついた。 「剣士にとって、剣は魂そのものか。笑わせるぜ・・・」  戦場では傭兵としてそれなりに名の知れた剣士だったが、先の見えない放浪暮らしに嫌気が差し、男はタムール国の市民権を得てこの国に留まることを選んだ。だが、元傭兵という肩書きがならず者の烙印となり、まともな剣士として扱われることはなかった。  いまでは犯罪組織の用心棒として麻薬の密売にまで手を染めている。落ちぶれ果てた自分にも、まだ剣士としての誇りが残っていたのかと、男は苦笑いを浮べた。
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