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迷路のような路地を抜けて裏通りに出ると、大柄の男はようやく足を止めて肩で大きく息をついた。
表通りとは対照的に裏通りには人気もなく、外灯の淡い明かりがあるだけで辺りは不気味なほど静まり返っていた。
「いったいどうしたってんだ、あんたらしくないじゃないか。いつもの威勢はどうした」
追いついてきた細身の男が、息を切らして咳き込んだ。
「シモンが近くに潜んでいるかもしれねえんだぞ。俺たちができることといえば、逃げることしかねえのさ」
男は額の汗を手の甲で拭いながら、緊張した面持ちで辺りを覗った。
その時だった。
薄暗い通りの先から、制服に身を包んだ一団が姿を現した。袖口の赤い灰色の制服に黒のブーツ。腰に長剣を下げ、左腕には赤い腕章をつけている。
「あ、あれは・・・」
二人は同時に息を呑んだ。
男たちは身を隠すこともできずに、その場に立ち尽くすだけだった。
制服の一団は気にもとめない様子で、目の前を整然と通り過ぎていく。
先頭をいく女剣士の横顔が目を惹いた。
鼻筋の通った精悍な顔立ちの女で、金色にたなびく髪の毛が外灯の淡い明かりの下で妖艶な光沢を放っていた。青い瞳の眼光は真っ直ぐに前を見据えて、引き締った唇には紅が引かれている。
屈強な男たちを従えた女剣士の姿は、勇ましくもあり優美だった。
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