さよならのキス

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「ねぇ、海斗。」 「ん?」 海斗がカップの隙間からこちらを見た 「真田さんと暮らせばいいじゃん。」 …… 「真田さんに、同棲しないかって誘われたんでしょ?」 …… 「私なら、もうだ…」 「わかった。」 ……え? 海斗を見上げると 不機嫌そうに下を見ている 「なんで…怒るの?」 「怒ってないよ。ただ、なつめと付き合ってるって親に言ったのに 今更 1人で家出て行くなんて変だろ。」 ……あぁ、たしかにそうだ。 ほら、やっぱり真田さんの勘違いじゃない 私がいるから実家を出ない訳じゃない カモフラージュが成り立たないから、家を出ないのよ 「そっか。そう言われたらそうだよね。」 ハハッと情けなく笑いコーヒーを口に含む 程よい苦味が私を現実へ連れて行く 「なつめ、」 「ん?」 顔を上げると、海斗は何ともいえない顔をして私を見ていた 寂しくもあり、悲しくもある その表情は一体何だろう その表情のまま、私に近づき すぐ前に立つと、顔を覗き込んだ 「な、何?」 一歩後ずさる私に さらに彼は一歩追い詰める
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