Another day

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Another day

あれから、10数年が経過した。 桜井が時間を遡った回数も、ゆうに1,000回を超えていたが、 未だに、真千を救い出すには至っていなかった。 しかし、最近になって、過去の出来事に変化が表れ始めた。 真千が上を向く時の一瞬のまばたき。男が歩き出す時の一瞬の間。 何度も繰り返し見ていなければ、気付かないような僅かな変化だ。 その日も、桜井は過去の世界を訪れていたが、 地面に転がる小石の配置ですら、コピー&ペーストしたような、 いつもの5月の水曜日、午後3時の光景が広がっていた。 桜井は体に染みついた無駄のない動きで、立ち位置に移動すると、 角度を正確に合わせて、いつもの準備を整え終えた。 真千が男とぶつかるのは、今から292秒後。 雄叫びを上げるのは、それから35秒後。 カウントダウンを始めて、そのタイミングを計る。
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