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その瞬間、男は体をビクッと硬直させて、
「え?何なん?今の何なん?」と、明らかに狼狽える。
真千は、自分のせいで男を驚かせてしまったと勘違いし、
「ごめんなさい。変なこと言って驚かせちゃって。」と謝った。
男は強張った表情を緩め、笑顔を浮かべながら、態度を取り繕う。
「あ、いやいや。もしかして、俺、パパと間違われた?」
男の質問に、真千はこくりと頷いたが、本当はそうではない。
そこに、父親らしき姿を一瞬見た気がしたのだが。
「それより、さっきの『おー』っていう声、何だったんだろ?」
声の主を探して、周りをキョロキョロ見渡す男と一緒に、
真千も、何もない空間をじっと見つめる。
「もしかして、誰か居たのかな?」
いつしか、空を覆っていた鈍色の雲は消え、辺りに太陽が差し込んでいた。
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