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Brand new day
「もうすぐ来るわよ。ほら、そんなに緊張しないで。」
桜井の肩をもみほぐしながら、佳恋がほほ笑む。
過去が変わったことにより、娘の命は救われた。
しかし、あの日から10数年の年月が経過しており、
真千もすでに20代半ばとなっているのだ。
「会って欲しい人が居る」と言ってくるのもおかしくない年齢だが、
いかんせん桜井にとっては唐突すぎて、心の準備が出来ていない。
「ピンポーン」チャイムが鳴り、佳恋が玄関へ出迎えに行く。
真千の明るい話し声が、だんだんと居間の方へ近付いてきた。
「お父さんただいま。紹介するね。来て。」
弾ける笑顔を浮かべながら、真千が交際相手を居間へと招くと、
廊下の奥から背の高い細身の男が、ぬっと現れた。
顔は俯いてはいるが、右目の黒目の中にあるほくろがはっきり見える。
桜井は、これが10数年かけて過去を変えた結果なのかと、
長らく憎悪の対象として見てきた男の顔を、改めて見据えた。
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