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桜井の目の前、数メートルのところまで真千がやって来ると、
男が、物陰からぬっと姿を現した。
スマホに夢中にだった真千は、
そのまま男とぶつかってしまい、思わずのけ反ってしまう。
「すみません!」
そう言って、真千が目線を上げると、
そこには、背の高い細身の男が立っていた。
右目の黒目の中にあるほくろが、はっきりと見えるほど、
男は目を大きく見開いて、真千を睨みつけている。
その表情にたじろいだ真千は、思わず体がすくむ。
やおら、男は手を伸ばすと、真千の両腕をグッと掴み、
強い力で、自分の元へと引き寄せようとした。
真千は、その手を振りほどこうと体を大きく揺さぶるが、
男は、さらに力を入れてその腕を掴んでくる。
鈍い痛みを伴って、指ががっちりと腕に食い込む。
「…来い。」くぐもった声で男が言う。
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