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3…2…1…。
その状況を終始無言で見つめていた桜井は、
心の中で唱えていたカウントダウンが0になると同時に、
ようやく初めて声を発した。
それも、あらん限りの声を振り絞って、雄叫びを上げたのだ。
「うぉぉぉぉぉ」
声は、吸い込まれるようにどんよりとした曇り空へ消えていく。
しかし、男はそんな大声に驚く様子は一切ない。
真千もまた、父親の声に全く反応を示さない。
男は桜井の姿など全く意に介さない素振りで、
目の前を堂々と横切ると、道路脇の茂みに真千を引き込んで行った。
やがてすぐに、真千の悲鳴が辺りに響く。
無力さと情けなさで、桜井はその場にうなだれるように倒れ込んだ。
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