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時間の遡行は、深い瞑想状態に落ちる感覚と似ている。
何も考えずに、目を閉じて、じっと集中していると、
次の瞬間、意識がすっと遠のいてくる。
危ない、気を失う、そう思って目を開けば、
もう、そこは、あの日の事件現場と化している。
「ここが…過去の世界?」
木々が風に揺れ、どこかで犬の鳴き声が聞こえる。
桜井は、目に見える景色をひとつひとつ確かめた。
ふと、1人の少女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
遠目にも、それが真千の姿だとはっきり分かる。
その瞬間、桜井は、自分が間違いなく過去の世界にいる確信を得た。
生きている真千の姿を、またこの目で見られるなんて。
それだけで、桜井は思わず涙がこぼれそうになる。
しかし、今は泣いている場合ではない。
一刻も早く、真千を救出しなくてはならない。
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