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佳恋は、その質問の意図をはかりかねた様子ではあったが、
さほど思案もせずに、答えを導き出した。
「そんなの1枚で置いておくから、分からなくなるのよ。
何枚も重ねて置いとけば、見つけやすいわよ。」
その答えに思わずハッとした桜井は、
「そうか…重ねて置けば…。」と何度も頷いた。
確かに、1枚では背景が透けて見えるセロファン紙も、
数十枚、数百枚と重ねることで、ぼんやりと白みがかって、
その存在が浮かび上がってくる。
だとすれば、透明な人間が、
同じ時間、同じ場所で、何十人何百人と幾重にも重なった時、
その存在は、他人の目にどういう風に映るだろうか。
いつしか、その姿が浮かび上がってくるのではないか。
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