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Same day
風に揺れる木々、空を覆う鈍色の雲、
そこには、いつもと何ひとつ変わらない風景が広がっていた。
遠くで救急車のサイレンが鳴る。それと同時に、近所の犬が吠え始める。
そのタイミングさえも、全く同じだ。
桜井は、改めて何も変わっていないことを確認すると、
いつもそうするように、同じ場所に立ち、同じ方向を向いて、
これから起こるであろう、同じ出来事を待った。
救急車が通り過ぎ、犬が吠えるのを止める。
それを見計らったように、
こちらに向かって歩いてくる、制服姿の中学生が見えてきた。
桜井の1人娘、真千だ。
真千は、器用にスマホを片手で操作していて、
桜井のことなど全く見向きもしない。
ましてや、これから自分の行く先に、
不審者が潜んでいることなど、気付くはずもない。
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