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休み時間になると、女子の何人かが早速彼女の席に行って話しかけていた。
「ねぇ、杉本さん、東京のどこから来たの?」
「前の学校では何て呼ばれてた?」
でも、彼女は頬杖をついて黙ったまま質問に答えようとしなかった。クラス中が興味津々で注目する中、しばらくの沈黙が流れる。
「杉本、さん?」
もう一度女子が話しかけても、彼女の反応はなかった。それどころか、面倒くさそうに軽く溜め息をついている。聞こえていない訳じゃない。恥ずかしがっている訳でもない。故意に無視しているのだ。
話しかけた女子は顔を真っ赤にして、「何? あの態度!」「せっかく話しかけてやったのに」って文句を言いながら彼女の席から離れていく。周りで見ていた女子たちも、その様子を冷ややかな目で見ていた。
「いくら美人だからって、お高くとまり過ぎじゃない?」
「何様のつもりよ」
「意外と、性格ブスだね」
そんなヒソヒソ声が次々に聞こえてくる。あたしと奈美も、例外なく彼女を冷たい眼差しで見ていた。
「なんかどえらい人が転校してきたね」
「だね」
どんな事情があるのかは知らない。だけどクラスメイトを無視するなんて、あんまりだ。あんな態度じゃ絶対に友達なんて出来るはずない。
あたしたちの、彼女に対する第一印象は最悪そのものだった。
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