1.都会からの転校生

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 休み時間になると、女子の何人かが早速彼女の席に行って話しかけていた。 「ねぇ、杉本さん、東京のどこから来たの?」 「前の学校では何て呼ばれてた?」  でも、彼女は頬杖をついて黙ったまま質問に答えようとしなかった。クラス中が興味津々で注目する中、しばらくの沈黙が流れる。 「杉本、さん?」  もう一度女子が話しかけても、彼女の反応はなかった。それどころか、面倒くさそうに軽く溜め息をついている。聞こえていない訳じゃない。恥ずかしがっている訳でもない。故意に無視しているのだ。  話しかけた女子は顔を真っ赤にして、「何? あの態度!」「せっかく話しかけてやったのに」って文句を言いながら彼女の席から離れていく。周りで見ていた女子たちも、その様子を冷ややかな目で見ていた。 「いくら美人だからって、お高くとまり過ぎじゃない?」 「何様のつもりよ」 「意外と、性格ブスだね」  そんなヒソヒソ声が次々に聞こえてくる。あたしと奈美も、例外なく彼女を冷たい眼差しで見ていた。 「なんかどえらい人が転校してきたね」 「だね」  どんな事情があるのかは知らない。だけどクラスメイトを無視するなんて、あんまりだ。あんな態度じゃ絶対に友達なんて出来るはずない。  あたしたちの、彼女に対する第一印象は最悪そのものだった。
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