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しばらくたわいもない会話をした後、蓮が何やら言い出しにくそうに話を切り出してきた。
「なぁ……今日転校してきた杉本さんのことだけどさ」
その名前を聞いただけで、一気に憂鬱な気分に突き落とされる。何となく、あたしは蓮のいない左側の田んぼに目を向けた。
「俺、ヨッツから彼女のこと『気にしてやってくれ』って頼まれたんだよね」
彼女と席が隣っていうだけで、蓮はヨッツから杉本さんのことを頼まれたらしかった。きっとクラスの女子の雰囲気を感じ取って、敢えて連に頼んだんだと思うけど。
「良かったじゃん。彼女、美人だし」
「バーカ。そんな問題じゃねぇんだって」
皮肉を込めたあたしの言葉に、蓮は声を強めて反論する。
「『気にしてやってくれ』って言われてもさ、男の俺じゃ限界があるだろ?」
「まあね」
「だからさ、おまえも俺に協力してくれよ」
「――はぁっ?」
あたしは思わず足を止めて、蓮の顔を凝視した。
「やーよ、何であたしが?」
「だってさ、他の女子も彼女のこと嫌ってそうだし。こんなこと頼めるの、おまえ位しかいないんだよ」
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